Cloudflareが「WordPressの精神的後継者」を自称する新しいCMSを公開したことで、続けるか乗り換えるかの判断材料を探している人は多いと思います。
結論から言えば、WordPressがオワコンかどうかは、誰の立場で見るかで答えが変わる ということです。
WordPressはオワコンか?2026年9月時点の結論
WP Engine訴訟のニュース、Automatticの株価下落といったネガティブなニュースに象徴されるように、投資家目線では黄信号が続いています。
Webマーケティングの現場で使う分には、WordPressは今も現役です。
投資家視点で見ると、Automatticの評価額は2021年の75億ドルから2025年には約20億ドル(BlackRockによる67%引き下げ)に下落しました。
WP Engine訴訟は2026年9月時点でも続いており、281名のレイオフ(全従業員の16%)も記憶に新しいです。この文脈での「オワコン」は否定しにくいでしょう。
参考:https://getlatka.com/companies/automattic/customers
参考:https://pitchbook.com/profiles/company/51586-57
Webマーケティングの実務者が使うツールとして見ると、話は別になります。
日本のCMS市場におけるWordPressのシェアは82.9%(2026年9月、W3Techs)で、SEOとの相性、プラグインの資産、制作会社への依頼のしやすさ、どれをとっても代替が難しい存在です。
この両面を理解したうえで判断するのが、今のWordPressとの正しい付き合い方です。
WordPressのCMSシェアは今どうなっているか
グローバルシェアの下落は2026年に入って続いている
WordPressの全ウェブサイトシェアは40.7%、CMS市場シェアは58.9%です(2026年9月7日時点、W3Techs)。
2011年の全サイトシェアは13.1%でした。そこから毎年2〜4ポイント成長を続け、2022年には43.2%、CMS市場シェアで65.2%に到達します。下がり始めたのは2026年に入ってからで、3月時点の42.6%から半年で約2ポイント落ちました。
1ポイント2ポイントの話なので、単月で見れば小さな変動です。ただ10年以上右肩上がりだったものが、下落方向に転じてそのまま戻っていない。この形は軽く見ないほうがいいと思っています。
シェアを奪っているのはWixとShopifyです。ホスティング込み・メンテナンス不要のSaaS型に流れる傾向はオープンソースCMS全体に共通していて、Joomla(2012年の約2.8% → 現在1.3%)やDrupal(2014年の1.9% → 現在0.7%)はもっと急激に落ちています。
| 年 | 全サイトシェア | CMS市場シェア |
|---|---|---|
| 2011年 | 13.10% | 約55% |
| 2022年 | 43.20% | 65.2%(過去最高) |
| 2025年 | 43.40% | 61.70% |
| 2026年3月 | 42.60% | 59.90% |
参考:W3Techs: Usage statistics of WordPress/barn2.com
日本のWordPressシェアは82.9%で世界と逆行している
日本語サイトに限ると、CMS市場でのWordPressシェアは82.9%で、世界平均の58.9%を24ポイント近く上回っています(2026年9月7日、W3Techs)。2位はShopifyの3.0%、3位がAdobe系の2.2%、4位Jimdo 2.0%、5位にStudioが1.8%。1位との差が桁違いで、日本だけWordPress一強がまだ崩れていません。
理由はいくつか重なっていると考えられます。エックスサーバーを筆頭にレンタルサーバー各社がWordPressの導入を標準化しており、SWELLやCocoonといった日本語特化テーマが充実。
制作会社のWordPressスキルが厚く積み上がっているという構造は、すぐ変わるものではありません。
ただ、国産ノーコードのStudioが5位まで上がってきたことは、注視に値します。
それでも尚、WordPressが「オワコン」と言われる理由
WordPressがオワコンと言われる背景は、技術・セキュリティ・ビジネスの3方向に分かれます。エンジニアが指摘するPHPと表示速度の問題、サイト運営者が抱えるプラグイン脆弱性と保守の問題、そして投資家が見ているAutomatticのガバナンスと業績の問題です。2026年はここにAI検索による前提の変化が加わりました。批判側の論点を、ひとつずつ見ていきましょう。
投資家・企業の信頼低下(WP Engine訴訟とガバナンス問題)
2024年9月、WordPressの創設者であるMatt Mullenweg(マット・マレンウェッグ)氏がWordCamp US 2024の場でWP Engineを「WordPressの癌」と公言しました。
その後、WP EngineのWordPress.orgへのアクセスを遮断し、100万以上の顧客がプラグイン・テーマの更新を受け取れなくなったという事案が勃発します。
さらにWP Engineが開発していたAdvanced Custom Fields(ACF)プラグインを強制接収し「Secure Custom Fields」に改名しました。
10月にはWP Engineがカリフォルニア連邦裁判所に提訴。12月に仮差止命令が出て、WordPress.orgへのアクセスとACFはWP Engineに戻っています。
訴訟自体は2026年9月時点でも続いています。独占禁止法・恐喝の主張は棄却されましたが、名誉毀損・業務妨害・不正競争は審理が継続中で、2026年は証拠開示(ディスカバリー)をめぐる応酬が中心です。
この一連の出来事が浮き彫りにしたのは、ガバナンスの構造的な問題です。
Mullenweg氏はWordPress共同創設者、WordPress Foundation理事、WordPress.orgの個人的所有者、Automattic CEOという4つの役割を兼任しています。
WordPress Foundationが保有する商標がAutomatticに独占的・無期限ライセンスとして付与されている点も、エンタープライズのIT担当者には引っかかりのある設計と言えます。
PHPと速度の問題(エンジニアが「古い」と言う根拠)
エンジニア界隈で「WordPress はオワコン」という話が出るとき、指されているのは主にPHPへの依存と速度の問題です。
PHPは2026年時点でも広く使われている言語ですが、GoやRust、TypeScriptなどが台頭するモダンな開発環境からすると、学習する動機が薄くなっています。
静的サイトジェネレーター(Astro、Next.js等)やヘッドレスCMSが選ばれやすくなっているのは、こうした技術トレンドと無関係ではありません。
速度の問題も、実際にあります。
WordPressはリクエストのたびにPHPを実行してデータベースを参照するため、設定やサーバースペックによってはページ読み込みが重くなります。
キャッシュプラグインなどで緩和はできますが、静的サイトと比べると根本的な差は残ります。
ただし「エンジニアの嫌い」と「Webマーケターが使いたい」は別の話。この混同が「WordPressオワコン論」の多くを生んでいます。
脆弱性の91%はプラグイン由来という構造問題
WordPressのセキュリティ問題は、コア本体よりもプラグインに集中しています。Patchstackの「State of WordPress Security in 2026」によれば、2025年にWordPressエコシステムで新たに報告された脆弱性は11,334件(前年7,966件から42%増)で、その91%がプラグイン、9%がテーマ由来でした。コア本体の脆弱性は6件だけで、いずれも低リスク判定です。
数の多さより厄介なのは速さです。同レポートでは、実際に悪用された脆弱性の45%が公開から24時間以内に攻撃を受けており、最初の悪用までの加重中央値は5時間とされています。しかも脆弱性の46%は、修正パッチが出ないまま公開されていました。
「月1回まとめて更新すればいい」という運用では、この速度に間に合いません。プラグインを入れれば入れるほど攻撃面が広がる、というより、更新を追いかける対象が増えるという言い方のほうが実態に近いです。
WordPressには管理の手間と知識が必要で、放置すると危険というのは事実です。
参考:Patchstack「State of WordPress Security in 2026」
SaaS型CMSの台頭とノーコードの浸透
Wixは過去10年で1,633%成長。Shopifyはeコマース市場の約34%を占めています。ホスティングとセキュリティ管理が不要な点が、大きなメリットになっているといっても過言ではないでしょう。
「WordPressを使う理由」として挙げられてきた「自由度」「コスト」「SEO」の優位性は、SaaS型CMSの機能向上によってじわじわと薄れています。
AI検索の普及で「WordPressならSEOに強い」の前提が揺れている
2026年に入って新しく加わった論点がこれです。生成AIによる検索が広がり、検索結果の上位に表示されても以前ほどクリックされない場面が増えました。
「WordPressはSEOに強い」は、検索順位が流入に直結するという前提の上に成り立っていた評価です。その前提が揺れたことで、CMS選定の判断材料としての重みも相対的に下がりました。
ただ、これはWordPressが劣化したという話ではありません。AI検索に引用されるかどうかを左右するのは、見出しの切り方や事実の書き方といったコンテンツ側の設計で、CMSの種類ではないからです。弊社がGEO(生成AI最適化)の実務で見ている限り、同じ記事をヘッドレス構成に載せ替えただけで引用が増えるという現象は確認できていません。
WordPressの保守・運用コストは実際いくらかかるのか
実費は月1,000円台から、ただし内訳は3層に分かれる
WordPressの運用コストは、サーバー・ドメイン・テーマ・プラグイン・保守作業の5つに分解できます。中小企業のコーポレートサイトやオウンドメディアを想定した場合、実費だけなら月1,000円台から始まります。
エックスサーバーのスタンダードプランは12ヶ月契約で月1,100円、36ヶ月契約なら月990円(税込・初期費用0円)。テーマはSWELLが17,600円の買い切り、Cocoonなら無料。
金額が跳ねるのは3層目、つまり保守作業を誰がやるかの部分です。
| 費目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| レンタルサーバー | 月990〜1,100円 | エックスサーバー スタンダード(36ヶ月/12ヶ月契約・税込) |
| 独自ドメイン | 年1,000〜4,000円程度 | TLDによる。サーバー契約に無料特典が付く場合あり |
| テーマ | 0円 or 17,600円 | Cocoon(無料)/SWELL(買い切り) |
| 有料プラグイン | 0円〜年数万円 | フォーム・バックアップ・セキュリティ等で必要になる場合 |
| 保守作業 | 自社の工数 or 外注費 | 更新・バックアップ確認・不具合対応。ここが最大の変動要因 |
本当のコストは金額ではなく「更新を追いかける時間」に出る
前述のとおり、2025年だけで11,334件の脆弱性が報告され、その46%はパッチのないまま公開されています。プラグインを10個入れているサイトなら、月に数回は更新通知が来る計算です。
1回の更新作業自体は数分で終わります。問題は、更新して表示が崩れたときの確認と切り戻しに時間が食われることで、これは件数が読めません。「WordPressは無料」と言われながら運用が重いと感じる原因は、だいたいここにあります。
逆に言えば、この部分を仕組みで潰せれば、コスト面でSaaS型に見劣りしなくなります。具体的な潰し方は後述のセキュリティ強化と保守の自動化にまとめました。
WordPressの代替になるCMS・ノーコードツールの選択肢
代替候補は4系統に分かれる
「WordPressの代わり」とひとくくりにされがちですが、実際は性格の違う4つの系統があります。ここを混ぜて比較すると判断を誤ります。
- SaaS型サイトビルダー(Wix、Studio、Jimdo)……ホスティング込み。制作から公開まで1つの画面で完結する
- EC特化型(Shopify、BASE)……決済・在庫・配送まで含む。ECが主目的ならここ
- ヘッドレスCMS+静的サイトジェネレーター(microCMS、Sanity、Contentful + Astro/Next.js+Vercel)……表示は速いがフロントエンドの実装者が必要
- ヘッドレスWordPress……管理画面はWordPressのまま、表示だけReact等で作る。資産を捨てずに速度を取る折衷案
2026年のSNSで話題になった「WordPressをやめてSanityに移した」という事例は、3つ目の系統です。バイブコーディング(AIに指示してコードを書かせる進め方)と組み合わせれば個人でも構築できるようになった、というのが話題の核心で、裏を返すとコードを書く前提は残っています。
導入費・運用コストの比較
各サービスの公式料金(2026年9月7日時点)を並べると、次のようになります。ヘッドレス構成はCMSとホスティングを別々に契約する点に注意してください。
| 構成 | 月額の目安 | 初期費用・その他 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| WordPress(レンタルサーバー) | 990〜1,100円 | テーマ17,600円買い切り等 | オウンドメディア・コーポレートサイト |
| Studio | 0円/3,980円(Business・年払い) | 月払いは5,460円 | 更新頻度が低いコーポレートサイト |
| Shopify | 3,650円(Basic・年額払い) | 決済手数料3.55%〜 | ECが主目的 |
| microCMS + Vercel | 4,900円〜+$20〜 | microCMSは税抜。無料枠あり | 更新は非エンジニア、表示は自作 |
| Sanity + Astro/Vercel | $15/人〜+$20〜 | 無料枠あり(10,000ドキュメント) | 開発者が主導する構成 |
| ヘッドレスWordPress | サーバー代+$20〜 | フロントの構築費が別途 | 既存のWP資産を活かしたい大規模サイト |
参考:エックスサーバー/Studio/Shopify/microCMS/Sanity/Vercel(いずれも2026年9月7日時点の公表料金)
「安くなるから移行する」は外しやすい
表を見ると分かるとおり、月額で劇的に安くなる組み合わせはほとんどありません。無料枠の範囲で収まる小規模サイトなら安くなりますが、それはWordPressでも同じです。
ヘッドレス構成は転送量・APIリクエスト数・管理ユーザー数で課金が積み上がる料金体系が多く、アクセスが伸びたときにコストも伸びます。加えてフロントエンドの構築費と、その後の改修を頼める人が必要になります。
移行の判断材料としてコストを使うなら、月額ではなく「3年間の総額(構築費+月額+想定される改修費)」で比べたほうが実態に合います。
WordPressを使い続ける場合のセキュリティ強化と保守の自動化
先に自動化すべき5つ
WordPressの弱点はプラグインの更新遅れです。裏返せば、更新まわりを自動で回せば弱点の大半は塞がります。優先順に5つ挙げます。
- コア・プラグイン・テーマの自動更新を有効化する(WordPress 5.5以降、管理画面から個別に設定可能)
- バックアップの自動取得と、別ストレージへの保存を設定する(サーバー標準の自動バックアップでも可)
- WAF(Webアプリケーションファイアウォール)を有効化する。エックスサーバーなどはサーバー側で提供している
- ログイン画面の防御(管理画面URLの変更、国外IPからのアクセス制限、2要素認証)
- 脆弱性の通知を受け取る仕組みを入れる(Patchstack等。使用中のプラグインに脆弱性が出た時点で気づける)
自動更新を怖がって手動運用にしている現場は多いのですが、前述のとおり最初の悪用までの中央値は5時間です。手動で追いつける速度ではありません。表示崩れが怖いなら、ステージング環境を用意してそちらで自動更新→差分確認、という順にするほうが現実的です。
自動化できない2つ
逆に、仕組みで代替できない作業も残ります。
ひとつはプラグインの棚卸しです。開発が止まったプラグイン、機能が重複しているプラグイン、もう使っていないのに有効化されたままのプラグインは、自動更新では減りません。年に1回でいいので、一覧を開いて「これは今も必要か」を人が判断する時間が要ります。
もうひとつは復旧テストです。バックアップは取れていても、実際に戻せるかは戻してみないと分かりません。弊社では新しく預かったサイトについて、初回にステージングへ復元して手順を確認するようにしています。ここで初めて「バックアップにデータベースが含まれていなかった」と判明したケースが実際にありました。
WordPressから移行する場合の手順と、実際につまずく場所
移行は5ステップに整理できる
ヘッドレスCMSでもSaaS型でも、やることの骨格は変わりません。
- 棚卸し……ページ一覧、フォーム、会員機能、EC、外部連携を洗い出す。移行しないページもここで決める
- コンテンツの書き出し……記事本文・画像・カテゴリ・メタ情報をエクスポートする
- 移行先の構築……テンプレート実装、入稿ルールの設計、プレビュー環境の用意
- URL設計と301リダイレクト……旧URLと新URLの対応表を作り、1対1でリダイレクトする
- 計測の引き継ぎ……Search Consoleのサイトマップ再送信、GA4・タグの移設、公開後の順位監視
期間の目安は、記事100本程度のオウンドメディアで、構築を含めて2〜3ヶ月というのが実感値です。
コンテンツの書き出しは、思っているより簡単
移行の相談で「記事を全部移せるのか」を心配されることが多いのですが、ここは最も機械的に片付く工程です。
WordPressの管理画面には標準で「ツール → エクスポート」があり、WXR形式(XML)で全投稿を書き出せます。プログラム側から扱うなら、REST APIの/wp-json/wp/v2/postsを叩けば本文HTML・カテゴリ・タグ・アイキャッチまでJSONで取得できます。認証なしで公開記事が取れるので、移行先を検討する段階でも試せます。
弊社はこのREST APIを使って、自社サイトの全記事をローカルにミラーリングする仕組みを常時動かしています。記事を書き出すこと自体は、スクリプト1本で終わる作業だという実感があります。
EmDashのように、WordPressからの移行を最初から想定しているCMSもあります。CloudflareはWXRファイルの読み込みに加えて、アプリケーションパスワードで保護したエンドポイント経由で移行する「EmDash Exporter」プラグインを用意しており、カスタム投稿タイプも新しいコレクションとして変換できるとしています。
実際につまずくのは、移行後の運用
失敗事例として語られるものは、ほとんどが書き出しの失敗ではありません。移した後の運用で詰まります。
よく聞くのは入稿体験の劣化です。ヘッドレス構成では管理画面と表示側が分離するため、プレビューの反映に一手間かかったり、WordPressのブロックエディタなら数クリックだった表組みや装飾が、決められたパーツの範囲でしか作れなくなったりします。記事を書く人の作業時間が増えて、更新頻度が落ちる。これがいちばん多い失敗の形です。
次に多いのがフォームとECです。Contact Form 7やWooCommerceで動いていた機能は移行先にそのまま持っていけないため、外部サービスへの置き換えか作り直しになります。見積もりから漏れやすい部分でもあります。
そして評価の引き継ぎ。301リダイレクトの設定漏れや、URL構造を「ついでに」変えたことによる順位下落は珍しくありません。移行と同時にサイト構造を変えるのは、原因の切り分けができなくなるので避けたほうがいいです。
逆に、うまくいっている事例に共通しているのは目的が絞られていることです。技術ブログを表示速度と開発体験のために移す、更新がほとんど発生しない会社案内をノーコードに移す。目的が1つに絞れているケースは、移行後の運用も安定しやすいです。
Webマーケティングの現場でWordPressが現役な理由
批判をひと通り見たうえで、なぜWebマーケティングの現場でWordPressが選ばれ続けるのかを説明しましょう。
60,000以上のプラグイン資産は一朝一夕では代替できない
WordPress.orgには無料プラグインが60,000以上、無料テーマが13,000以上登録されています。SEO(Yoast SEO、RankMath)、フォーム(Contact Form 7)、EC(WooCommerce)、キャッシュ、バックアップ……一般的なWebマーケティングで必要な機能は、ほぼプラグインで賄えます。
この資産を他のプラットフォームで再現するのは(今のところ)現実的ではないと考えます。乗り換えコストが大きいのは、換えがたい価値が積み上がっているからです。
ヘッドレスWordPressの採用も増えており、WP Engineの調査では2025年時点でエンタープライズ組織の64%がヘッドレス構成を使っているとされています(2019年は25%)。
WordPressをコンテンツ管理のバックエンドに使い、フロントエンドをReact/Next.jsで構築するというパターンで、技術的な不満を回避しながら資産を活かす使い方です。
こういったサイトは、EmDashに乗り換えるメリットはかなり少ないです。
日本の制作環境がWordPressを支える構造
日本のWeb制作会社のほとんどが、WordPressのスキルを持っています。
SWELL(国内シェア1位、¥17,600の買い切り)やCocoon(無料・エックスサーバーが事業継承)のような日本語最適化テーマが充実しており、レンタルサーバー側もWordPress導入を標準サポートしています。
エックスサーバーを使って、SWELLかCocoonを入れて、Yoast SEOか同等プラグインを設定する。こういったルートは、日本の中小企業Web担当者の標準的なスタートラインと言えるでしょう。
ここから離脱するには、制作会社の選び直しも含めた大がかりな変更が必要になるのではないでしょうか。
SEOとコンテンツマーケティングとの相性
オウンドメディアやコンテンツマーケティングの文脈では、今のところWordPressを超える選択肢が見当たりません。データベース型サイトですら、WordPressを選択するケースもあります。
記事の管理、内部リンク、メタ情報の編集、パーマリンクの制御、サイトマップ自動生成、これらをGUI上で管理できる環境が、Webマーケターには必要だからです。
SaaS型CMSでもSEO設定はできるようになってきましたが、細かい制御の自由度はまだWordPressに及びません。
2026年注目の新CMS「EmDash」はWordPressの後継になれるか
CloudflareがWordPressの「精神的後継者」を名乗ったCMS
ここが今年一番の注目ポイントではないでしょうか。
2026年4月上旬、Cloudflareが新しいオープンソースCMS「EmDash」を公開しました。Astro 6.0をベースに構築され、Cloudflare Workersに最適化されています。
ライセンスはMITで、エンタープライズ市場を意識した設計です。
プラグインをDynamic Workerというサンドボックス内で隔離実行し、マニフェストで宣言された権限しか実行できないようにする仕組みは、WordPressのプラグイン脆弱性問題への直接的な回答として設計されています。Cloudflareが公開時に引用した「脆弱性の96%がプラグイン由来」という数字も、出典はPatchstackのホワイトペーパーです。
AIエージェントを活用して2ヶ月で開発されたというエピソードも、鮮烈な印象を残します。
前述のMullenweg氏はEmDashの登場に対し、特定インフラ(Cloudflare)への依存が「パブリッシングの民主化」というWordPressの精神に反すると批判しました。
同時に、EmDashの「Skills」機能を評価し、WordPress側でも同様の機能開発に着手する意向を示しました。
批判しながら真似るというのは、脅威と認識している証拠でもあります。WordPressを利用する制作会社としての立場からいえば、競争によりWordPress自体が良くなっていく、という期待も持てるかも知れません。
| 項目 | WordPress | EmDash |
|---|---|---|
| ベース技術 | PHP + MySQL | Astro + Cloudflare Workers |
| プラグイン | 60,000以上(成熟) | ほぼゼロ(立ち上げ期) |
| セキュリティ設計 | プラグイン個別管理 | サンドボックス隔離 |
| ライセンス | GPL v2 | MIT |
| 現在のステータス | 本番利用可 | v0.1.0 プレビュー段階 |
公開から5ヶ月、EmDashは0.36まで来た
2026年4月の公開時点ではv0.1.0のデベロッパープレビューでしたが、開発は止まっていません。
GitHubのリポジトリ(emdash-cms/emdash)を2026年9月7日に確認したところ、コア本体の最新リリースはemdash@0.36.0(2026年9月1日)。スター数は12,242、オープンなIssueは314件で、コミットはその日も入っていました。プラグインを配布するためのレジストリ関連パッケージ(registry-client、plugin-cli、registry-moderation等)も並行して公開されており、エコシステムの土台を作りにいっている段階です。
それでもバージョンは0.xのままで、プラグイン資産の量はWordPressの60,000と比べる段階にありません。既存のWordPressサイトを今すぐ移行する理由は、2026年9月時点でもまだないというのが弊社の見方です。
ただし4月に書いた「1年程度のアップデートが続けば本番利用の候補に入る」という見立てに対しては、5ヶ月で0.1.0から0.36.0まで進み、想定より速いペースで動いています。ウォッチの優先度は上げていいと思っています。
参考:Cloudflare Blog: Introducing EmDash/GitHub: emdash-cms/emdash(2026年9月7日時点)
EmDashがWordPressを脅かすために必要な条件
将来的な可能性として、3つの条件が揃えばWordPressに対する本格的な競合になり得ます。
(1)サードパーティのプラグイン(Skills)が充実すること、(2)Cloudflare以外のホスティングへの対応が広がること、(3)エンタープライズ導入事例が積み上がること。
特に、少なくとも(2)Cloudflare以外のホスティングへの対応がなければ、国内の制作会社が積極的には動かないのではと弊社は予想しています。
とはいえ、WordPressのガバナンスリスクを回避したいエンタープライズ層や、開発者コミュニティなどが協力してEmDashの受け皿になる可能性は十分にあります。
WordPressを続けるべきか?用途・立場別の判断軸まとめ
■続けて問題ない場合
- コンテンツマーケティング・オウンドメディアが主な用途
- 既存の制作会社・エコシステムへの依存度が高い
- 日本語でのSEO運用が中心
- 更新作業を自動化できている、または任せられる相手がいる
■乗り換えを検討する価値がある場合
- ECサイトが主な用途(Shopifyの方が管理が楽なケースが多い)
- 技術スタックをモダンにしたいエンジニアチームが主導している
- WP Engine騒動を受け、WordPressガバナンスリスクを重視している
- 更新がほとんど発生しないサイトで、保守を丸ごと手放したい
■EmDashを含む新CMSは今すぐ移行しなくていい
- 2026年9月時点でバージョンは0.36.0。本番利用は非推奨
- プラグイン資産が立ち上がり始めた段階
- 1〜2年後に再評価するタイミングで情報収集すれば十分
2026年9月の時点では「Webマーケターは続けていい、エンジニアは別の選択肢を検討する価値がある、EmDashはウォッチリストに入れておく」というのが弊社の見立てです。
WordPressが40%超のウェブサイトを動かしているインフラである以上、学習価値がゼロになることは当面ありません。
必要以上に焦ったり心配したりせず、既存のWordPressサイトの価値向上に努めましょう!
WordPressのオワコン論に関するよくある質問
WordPressはやめたほうがいいですか?
用途によります。オウンドメディアやコンテンツマーケティングが目的なら、2026年9月時点でWordPressをやめる合理的な理由はほとんどありません。ECが主目的、あるいは更新がほとんど発生しないサイトで保守から解放されたい場合は、ShopifyやStudioへの移行を検討する価値があります。
WordPressで稼げないのはなぜですか?
CMSの問題ではなく、検索環境の変化が主因です。生成AI検索の普及で、上位表示してもクリックされない場面が増えました。同じ記事を別のCMSに移しても、この状況は変わりません。
WordPressはもう古いですか?時代遅れですか?
技術基盤としては古い部分があります。リクエストのたびにPHPを実行してデータベースを参照する構造は20年以上変わっておらず、静的サイトと比べると表示速度で不利です。一方で、全ウェブサイトの40.7%、CMS市場の58.9%で稼働している現役のソフトウェアでもあります(2026年9月7日、W3Techs)。
WordPressのシェアは減少していますか?
減っています。CMS市場シェアは2022年の65.2%が過去最高で、2026年3月に59.9%、9月には58.9%まで下がりました。ただし日本語サイトに限ると82.9%で、世界の傾向とは逆に高止まりしています。
WordPressの弱点は何ですか?
プラグインへの依存です。2025年に報告されたWordPress関連の脆弱性11,334件のうち91%がプラグイン由来で、コア本体は6件でした(Patchstack)。プラグインを増やすほど更新を追いかける対象が増え、放置するとリスクが上がります。
今後、WordPressはどうなるのでしょうか?
短期でなくなることはありません。40%以上のウェブサイトが稼働しているため、移行だけでも年単位の時間がかかります。中期的には、SaaS型に流れる層とヘッドレス構成に進む層に分かれ、その中間にいるWordPressのシェアは緩やかに下がっていくと弊社は見ています。
ヘッドレスCMSとは何ですか?
コンテンツの管理機能だけを持ち、表示部分(フロントエンド)を持たないCMSです。管理画面で書いた記事をAPI経由で配信し、表示側はAstroやNext.jsなどで別に作ります。表示は速くなりますが、フロントエンドを実装・保守できる人が必要です。
ヘッドレスCMSの料金はいくらですか?
microCMSはHobbyプランが無料、Teamプランが月4,900円から(税抜)。SanityはFreeプランがあり、Growthプランは1人あたり月15ドルです。加えて表示側のホスティング費用(Vercelなら無料枠またはPro月20ドル)がかかります。転送量やAPIリクエスト数で課金が積み上がる料金体系のため、アクセスが増えると費用も増えます(いずれも2026年9月7日時点の公表料金)。

