公開日:2026年04月20日
Cloudflareが「WordPressの精神的後継者」を自称する新しいCMSを公開したことで、続けるか乗り換えるかの判断材料を探している人は多いと思います。
結論から言えば、WordPressがオワコンかどうかは、誰の立場で見るかで答えが変わる ということです。
WP Engine訴訟のニュース、Automatticの株価下落といったネガティブなニュースに象徴されるように、投資家目線では黄信号が続いています。
Webマーケティングの現場で使う分には、WordPressは今も現役です。
投資家視点で見ると、Automatticの評価額は2021年の75億ドルから2025年には約20億ドル(BlackRockによる67%引き下げ)に下落しました。
WP Engine訴訟は2026年3月時点でまだ続いており、281名のレイオフ(全従業員の16%)も記憶に新しいです。この文脈での「オワコン」は否定しにくいでしょう。
参考:https://getlatka.com/companies/automattic/customers
参考:https://pitchbook.com/profiles/company/51586-57
Webマーケティングの実務者が使うツールとして見ると、話は別になります。
日本のCMS市場におけるWordPressのシェアは83%を超えており、SEOとの相性、プラグインの資産、制作会社への依頼のしやすさ、どれをとっても代替が難しい存在です。
この両面を理解したうえで判断するのが、今のWordPressとの正しい付き合い方です。
2011年、WordPressの全ウェブサイトシェアは13.1%でした。それが毎年2〜4ポイント成長を続け、2022年には43.2%、CMS市場シェアで65.2%を記録します。
ところが2026年3月のデータ(W3Techsによる)では全サイトシェアが42.6%、CMS市場シェアが59.9%と、初めて有意な下落を記録しました。
数字だけ見れば0.8~1ポイント程度の変動で小さく見えますが、10年以上右肩上がりが続いた後の初めての下落という点で、意味合いは軽くないでしょう。
シェアを奪っているのはWix(+1.1pt)とShopify(+0.5pt)です。
ホスティング込み・メンテナンス不要のSaaS型に流れているのは、オープンソースCMS全体に共通する傾向で、Joomla(2012年の約2.8% → 現在1.3%)やDrupal(2014年の1.9% → 現在0.7%)はより急激に落ちています。
| 年 | 全サイトシェア | CMS市場シェア |
|---|---|---|
| 2011年 | 13.10% | 約55% |
| 2022年 | 43.20% | 65.2%(過去最高) |
| 2025年 | 43.40% | 61.70% |
| 2026年3月 | 42.60% | 59.90% |
参考:barn2.com
ただし、これも日本だけは話が違います。
日本のCMS市場でのWordPressシェアは83.2%(2026年1月、W3Techsによる)で、世界平均の約60%を大きく上回るだけでなく、微増が続いている状況です。
理由はいくつか重なっていると考えられます。エックスサーバーを筆頭にレンタルサーバー各社がWordPressの導入を標準化しており、SWELLやCocoonといった日本語特化テーマが充実。
制作会社のWordPressスキルが厚く積み上がっているという構造は、すぐ変わるものではありません。
ただ、Studioが国内CMS市場で5位に浮上していることは、注視に値します。
批判側の論点をひとつひとつに見ていきましょう。
2024年9月、WordPressの創設者であるMatt Mullenweg(マット・マレンウェッグ)氏がWordCamp US 2024の場でWP Engineを「WordPressの癌」と公言しました。
その後、WP EngineのWordPress.orgへのアクセスを遮断し、100万以上の顧客がプラグイン・テーマの更新を受け取れなくなったという事案が勃発します。
さらにWP Engineが開発していたAdvanced Custom Fields(ACF)プラグインを強制接収し「Secure Custom Fields」に改名しました。
10月にはWP Engineがカリフォルニア連邦裁判所に提訴。2026年3月時点で訴訟は続いています。
(独占禁止法・恐喝の主張は棄却されたが、名誉毀損・業務妨害・不正競争は審理継続中)
この一連の出来事が浮き彫りにしたのは、ガバナンスの構造的な問題です。
Mullenweg氏はWordPress共同創設者、WordPress Foundation理事、WordPress.orgの個人的所有者、Automattic CEOという4つの役割を兼任しています。
WordPress Foundationが保有する商標がAutomatticに独占的・無期限ライセンスとして付与されている点も、エンタープライズのIT担当者には引っかかりのある設計と言えます。
エンジニア界隈で「WordPress はオワコン」という話が出るとき、指されているのは主にPHPへの依存と速度の問題です。
PHPは2026年時点でも広く使われている言語ですが、GoやRust、TypeScriptなどが台頭するモダンな開発環境からすると、学習する動機が薄くなっています。
静的サイトジェネレーター(Astro、Next.js等)やヘッドレスCMSが選ばれやすくなっているのは、こうした技術トレンドと無関係ではありません。
速度の問題も、実際にあります。
WordPressはリクエストのたびにPHPを実行してデータベースを参照するため、設定やサーバースペックによってはページ読み込みが重くなります。
キャッシュプラグインなどで緩和はできますが、静的サイトと比べると根本的な差は残ります。
ただし「エンジニアの嫌い」と「Webマーケターが使いたい」は別の話。この混同が「WordPressオワコン論」の多くを生んでいます。
多くの専門家が指摘するところですが、WordPressのセキュリティ問題は、コア自体よりもプラグインに起因することが多いです。
実際、CloudflareのEmDash公開時の説明では「WordPressサイトの脆弱性の96%がプラグイン由来」というデータが引用されています。
プラグインを入れれば入れるほど攻撃面が広がる為、更新を怠ったプラグインが踏み台になるケースは実際に多いと言えます。
WordPressには管理の手間と知識が必要で、放置すると危険というのは事実です。
Wixは過去10年で1,633%成長。Shopifyはeコマース市場の約34%を占めています。ホスティングとセキュリティ管理が不要な点が、大きなメリットになっているといっても過言ではないでしょう。
「WordPressを使う理由」として挙げられてきた「自由度」「コスト」「SEO」の優位性は、SaaS型CMSの機能向上によってじわじわと薄れています。
批判をひと通り見たうえで、なぜWebマーケティングの現場でWordPressが選ばれ続けるのかを説明しましょう。
WordPress.orgには無料プラグインが60,000以上、無料テーマが13,000以上登録されています。SEO(Yoast SEO、RankMath)、フォーム(Contact Form 7)、EC(WooCommerce)、キャッシュ、バックアップ……一般的なWebマーケティングで必要な機能は、ほぼプラグインで賄えます。
この資産を他のプラットフォームで再現するのは(今のところ)現実的ではないと考えます。乗り換えコストが大きいのは、換えがたい価値が積み上がっているからです。
ヘッドレスWordPressの採用も増えており、WP Engineの調査では2025年時点でエンタープライズ組織の64%がヘッドレス構成を使っているとされています(2019年は25%)。
WordPressをコンテンツ管理のバックエンドに使い、フロントエンドをReact/Next.jsで構築するというパターンで、技術的な不満を回避しながら資産を活かす使い方です。
こういったサイトは、EmDashに乗り換えるメリットはかなり少ないです。
日本のWeb制作会社のほとんどが、WordPressのスキルを持っています。
SWELL(国内シェア1位、¥17,600の買い切り)やCocoon(無料・エックスサーバーが事業継承)のような日本語最適化テーマが充実しており、レンタルサーバー側もWordPress導入を標準サポートしています。
エックスサーバーを使って、SWELLかCocoonを入れて、Yoast SEOか同等プラグインを設定する。こういったルートは、日本の中小企業Web担当者の標準的なスタートラインと言えるでしょう。
ここから離脱するには、制作会社の選び直しも含めた大がかりな変更が必要になるのではないでしょうか。
オウンドメディアやコンテンツマーケティングの文脈では、今のところWordPressを超える選択肢が見当たりません。データベース型サイトですら、WordPressを選択するケースもあります。
記事の管理、内部リンク、メタ情報の編集、パーマリンクの制御、サイトマップ自動生成——これらをGUI上で管理できる環境が、Webマーケターには必要だからです。
SaaS型CMSでもSEO設定はできるようになってきましたが、細かい制御の自由度はまだWordPressに及びません。
ここが今年一番の注目ポイントではないでしょうか。
2026年4月上旬、Cloudflareが新しいオープンソースCMS「EmDash」を公開しました。Astroをベースに構築され、Cloudflare Workersに最適化されています。
ライセンスはMITで、エンタープライズ市場を意識した設計です。
プラグインをサンドボックス内で隔離実行し、宣言された権限のみ許可する「Skills」機能は、WordPressのプラグイン脆弱性問題への直接的な回答として設計されています。
AIエージェントを活用して2ヶ月で開発されたというエピソードも、鮮烈な印象を残します。
前述のMullenweg氏はEmDashの登場に対し、特定インフラ(Cloudflare)への依存が「パブリッシングの民主化」というWordPressの精神に反すると批判しました。
同時に、EmDashの「Skills」機能を評価し、WordPress側でも同様の機能開発に着手する意向を示しました。
批判しながら真似るというのは、脅威と認識している証拠でもあります。WordPressを利用する制作会社としての立場からいえば、競争によりWordPress自体がが良くなっていく、という期待も持てるかも知れません。
| 項目 | WordPress | EmDash |
|---|---|---|
| ベース技術 | PHP + MySQL | Astro + Cloudflare Workers |
| プラグイン | 60,000以上(成熟) | ほぼゼロ(立ち上げ期) |
| セキュリティ設計 | プラグイン個別管理 | サンドボックス隔離 |
| ライセンス | GPL v2 | MIT |
| 現在のステータス | 本番利用可 | v0.1.0 プレビュー段階 |
結論としては、今すぐEmDashに移行するのは早いです。
2026年4月時点ではバージョン0.1.0のプレビューで、動作確認用のPlayground環境も提供されていますが、プロダクションで使えるレベルではありません。
プラグイン(Skills)の資産もほぼゼロです。
弊社では、「1年程度のアップデートが続き、品質とプラグイン資産が充実して初めて本番利用の候補に入る」という見方が現実的かなと考えています。
エンジニアやサイト管理者として動向を追うのは理にかなっていますが、既存のWordPressサイトを今すぐ移行する理由はありません。
将来的な可能性として、3つの条件が揃えばWordPressに対する本格的な競合になり得ます。
(1)サードパーティのプラグイン(Skills)が充実すること、(2)Cloudflare以外のホスティングへの対応が広がること、(3)エンタープライズ導入事例が積み上がること。
特に、少なくとも(2)Cloudflare以外のホスティングへの対応がなければ、国内の制作会社が積極的には動かないのではと弊社は予想しています。
とはいえ、WordPressのガバナンスリスクを回避したいエンタープライズ層や、開発者コミュニティなどが協力してEmDashの受け皿になる可能性は十分にあります。
■続けて問題ない場合
■乗り換えを検討する価値がある場合
■EmDashを含む新CMSは今すぐ移行しなくていい
2026年4月の時点では「Webマーケターは続けていい、エンジニアは別の選択肢を検討する価値がある、EmDashはウォッチリストに入れておく」というのが弊社の見立てです。
WordPressが40%超のウェブサイトを動かしているインフラである以上、学習価値がゼロになることは当面ありません。
必要以上に焦ったり心配したりせず、既存のWordPressサイトの価値向上に努めましょう!
ディー・エム・エヌ合同会社|dmn llc.
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