カスタマーマッチとは、Google広告で利用できる機能のひとつで、広告主が自身で管理しているエンドユーザーの個人情報(メールアドレスなど)をGoogleに共有することで、オンライン広告に活用できるものです。
iOSのアップデートによるITPの強化、サードパーティCookieの廃止(※)といった背景から注目されています。
(※)当初は2022年1月までとされていましたが、2024年4月23日に3度目となる延期が発表され廃止時期は未定です
カスタマーマッチの仕組みは以下の通りです。
①広告主は、同意済みのユーザーリスト(顧客リスト)を準備します。使用できるユーザーデータは「メールアドレス」「電話番号」「住所」「デバイスID」です。
②ユーザーリストをハッシュ化して、Google広告の管理画面からなど、指定された方法でアップロードします。
③ユーザーリストが、SSLで暗号化・保護されたGoogleのユーザーとマッチングされます。利用できないユーザーリストは削除されます。
④マッチングされた利用可能なユーザーの「オーディエンス」が作成されます。
⑤オーディエンスを元に、Google広告上でターゲティングやモニタリング、類似オーディエンスの作成、機会学習のシグナルなどに活用可能になります。
カスタマーマッチの利用自体には特別な費用はかかりません。
カスタマーマッチには、休眠顧客を掘り起こしや、オンライン上で既存の顧客にアプローチしたり、新たな商品やサービスを提案する(クロスセル)といった使い方のほか、「価値の高い顧客と似た特徴を持つユーザーを見つける」ことが可能なため、幅広い活用方法があります。
ただし、従来のリマーケティングのようなウェブサイトの訪問ユーザーに対するCookie付与と異なり、自動で最新の状態を保つ機能がありません。
自動で更新・接続されるデータソースには適切な同意管理が必要になるため、準備と運用には相応の初期コストがかかると考えてよいでしょう。
カスタマーマッチのメリットは大きく2つあります。まずは従来の「リマーケティング」に近い施策が可能になるという点。
2020年中頃までは、iOS(おもにiPhone)ユーザーでもリマーケティングといわれる広告手法が十分に機能していましたが、2021年以降は広告表示機会が著しく減少しました。
カスタマーマッチの登場で、失われた広告表示機会を取り戻せる可能性があります。
2つ目は、リマーケティングやディスプレイキャンペーンを利用していない、つまりサーチ(検索連動型広告)のみのアカウントでも、広告パフォーマンスの向上が期待できることです。
カスタマーマッチのオーディエンスは、自動入札シグナルとして利用され AI・機械学習によるオークション入札の最適化に寄与します。
単体施策として見た場合、リスクがほぼない(※)という点もオススメする理由の一つです。
(※)例えば新しい広告クリエイティブを投入した際、その広告がユーザーに受け入れられなかった場合は、クリック率やコンバージョン率の低下により広告パフォーマンス全体にマイナスの影響が出てしまう可能性があります
カスタマーマッチでは、よほどビジネスに無関係なリストをアップロードするような事がなければ、そういった心配はないと言えるでしょう。
AIによる最適化の恩恵の大きいアカウント(DSAや P-MAX 中心のアカウントであったり、単純に予算規模の大きいアカウント)であればあるほど、カスタマーマッチいよる恩恵・メリットは大きいと予想できます。
カスタマーマッチの導入には、アカウントが以下の基準を満たしている必要があります。
・これまでポリシーを遵守してきた実績があること
・これまでお支払いに関して問題が発生していないこと
基準が満たされていない場合、またはサイトのジャンルがデリケートな内容の情報に関連する商品(医薬品など)であるなど、パーソナライズド広告のターゲティング機能に基づく制限をうけている場合は、「お客様のアカウントはカスタマーマッチのポリシーに違反しています」とアナウンスされカスタマーマッチを利用できません。
参考:https://support.google.com/adspolicy/answer/6299717
https://support.google.com/adspolicy/answer/143465
そのうえで、下記の確認事項をクリアして顧客データをアップロードします。
・広告主様に代わってサービスを提供する第三者と顧客データを共有していることをプライバシー ポリシーで開示すること
・法律上必要な場合、またはパーソナライズド広告や Google の EU ユーザーの同意ポリシーなどユーザーの同意に適用される Google のポリシーで求められる場合は、そのような共有について同意を得ること
・顧客データをアップロードする際には、Google が承認する API とインターフェースのみを使用すること
・適用されるすべての法律および規制(自主規制によるガイドラインや業界が定めるガイドラインを含む)を遵守すること
引用元:Google広告ヘルプ
また、2024年6月現在、カスタマーマッチのアップロードの際に同意シグナルを含める必要があります。
詳しくはカスタマーマッチでの欧州経済領域(EEA)のユーザーに対する同意シグナルについてをご覧ください。
顧客データをアップロードする際、幾つかのフォーマットのパターンが存在しますが、いずれのフォーマットでもデータの「ハッシュ化≒暗号化」が必須となります。
代理店にアップロードを依頼する場合も、ハッシュ化済のデータであれば安全です。
(※)本ページの最後に、ハッシュ化ツールを用意しました!
データはブラウザ上で処理され、弊社に送信されることはありませんので、お気軽にご利用ください。
おすすめ度 | 必須データのパターン |
---|---|
◎ | メールアドレスのみ(推奨) |
◯ | 電話番号のみ |
△ | 姓名、国、郵便番号の組み合わせ |
△ | 上記3パターン全ての項目を入力 |
△ | デバイスIDのみ(※アプリ) |
アップロード直後は、マッチ率とサイズが小さすぎてすぐには使用できないケースがあります。(※とくに「姓名、国、郵便番号の組み合わせ」等のパターン)
その場合は半日~一日待ってみて、あらためてオーディエンスのサイズを確認するとよいでしょう。
カスタマーマッチはGoogle広告だけでなく、ほぼ同様の機能が Yahoo!広告 や Facebook(Instagram)、X(旧 Twitterのテイラーオーディエンス)でも実装されています。
大まかな仕組みはGoogle広告と同様ですので、細かい仕様や仕組み、規約などは各媒体のヘルプを参照してみてください。
この中で、マッチ率が高いのはやはりGoogle広告です。
国内ユーザーのメールアドレスであれば、5~7割程度はマッチする可能性がありますので、ざっくりと2000件以上のメールアドレスのリストがあれば十分活用できるでしょう。
一方、他媒体では、リストによりますがマッチ率は1~5割程度まで低下しますので、もう少しリストサイズがほしいところです。
Google広告の管理画面にアクセスします。
1.ツール > 共有ライブラリ」 > オーディエンスマネージャー をクリックします。
2.「青いプラスボタン」をクリックして、新しいセグメントを作成します。
3.プルダウン メニューで [顧客リスト] を選択します。
4.データソースとして「ファイルを手動でアップロードする」を選択します。
5.同意事項を確認し、チェックしてアップロードします。
以上がおそらくもっとも簡便な方法となります。
自動化された同意済リストの接続など、高度な対応が必要な場合はお気軽にご相談ください。
開設時期:2020年12月
総運用額:420,353円
カスタマーマッチ:○
実稼働56日(1月時点)と、90日に満たないアカウントでしたが利用可能でした。
開設時期:2021年11月(ID:5xx-xxx-xx49 アライアンス管理)
総運用額:290,660円
カスタマーマッチ:○
もっとも新しいアカウントで、利用金額が基準を満たしていませんでしたが、こちらも利用可能となっていました。
開設時期:2012年2月(ID:7xx-xxx-xx20 弊社管理)
総運用額:2,226,076円
カスタマーマッチ:×
唯一利用不可だったのが、2021年1月で利用を止めており、総額や運用日数は基準をクリアしていたものの、直近のアクティビティがないアカウントでした。
Google広告アカウント自体が、カスタマーマッチの利用資格を満たしている場合は、「オーディエンスマネージャー」から、データセグメントタブより新規追加をクリック、「顧客リスト」を選択することで、アップロード画面に遷移します。
作成したばかりのアカウントなど、要件を満たしていない場合は以下のメッセージが表示されます。
公式ヘルプページには、具体的な「アカウントの基準」として下記の条件が記載されています。こうした基準はアップデートされますので、最新情報を参考にしましょう
ちなみに、「いままで利用できなかったけれども、カスタマーマッチ機能が開放された」際には、下記のような通知が届きました。
ご覧いただいてきたように、カスタマーマッチの導入自体は、そこまで難しい作業ではありません。
個人情報の第三者提供(本件であれば「外国にある第三者への提供」)に同意されたリストさえあれば、すぐにでも実施できます。
しかし、同意済のリストの準備が難しいケースも多々あります。
顧客の個人情報を扱うという点でリスクを感じ、慎重なビジネス判断が必要と判断される企業が多いのも事実です。
例えばプライバシーマークを取得しているクライアントさまで、利用規約とプライバシーポリシーの更新、関連部署と連携や調整が必要となるなど、かなり「重い」作業となってしまう為に導入に及び腰となってしまっているケースもあります。似たような理由で、会社として導入を敬遠されているケースも多くあるのではないでしょうか。
逆に見れば、他社に先んじて導入することで、いち早く「脱Cookie」の一歩を踏み出せることを考えられますので、ぜひ検討いただきたい施策です。
カスタマーマッチの施策成果を数値化するのは、テスト機能のある施策に比べて圧倒的に難しいといえます。
考え方として、例え話で恐縮ですが、メルマガを作成したことがある方であれば、属性ごとにリストをセグメント化して、タイトルや本文の内容を変えることでメルマガの開封率やクリック率が大きく異なってくることを肌感として理解されていると思います。
カスタマーマッチ(オーディエンス)にも、同様のことが言えるのではと弊社は考えています。
人間ではなく、AIがオーディエンスごとに広告表示のタイミングや広告クリエイティブを最適化してくれる訳です。これってかなり強力だと思いませんか?
カスタマーマッチの手動アップロードは、もっとも簡単な導入方法ですが「どういった頻度で更新すべきか?」といったご相談もいただきます。
このご質問に関しては、前置きとして「意味のあるリスト(広告効果にポジティブもしくはネガティブに働くという仮説があるリスト)であれば、すべてアップロードすべき」という回答しています。
先ほどのメルマガの例でいえば、メルマガは到達率も重要なKPIですので、使われなくなったメールアドレスの消し込みにも神経を使われていると思います。
カスタマーマッチも同様に、リストを「最新に保つ」ことのメリットは存在すると思います。たった数件かも知れないけれども、もっとも新鮮なリストはコンバージョンに結びつく可能性も高いからです。
とはいえ全体の95%が重複しているようなリストに価値があるのか?といった意見も出てくるでしょう。ですのでまずは神経質にならず、負担のないようにアップロードのルーチンを組むことを推奨しています。
その上で、労力に見合った効果があるかどうかをレビューして、ベストプラクティスを探っていくのが良いでしょう。
CSVファイルの内容をコピー&ペーストして、実行ボタンを押してください。
一行目に、ヘッダー行(Emailなど)を含む必要があります。
(例1)
(例2)
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